介護福祉士試験対策のポイント

人間の尊厳と自立

この科目は、学習内容量は少なめですが、
今まで、社会福祉についてあまり触れていない人は
難しいと感じる科目で、学習難易度は高い科目であるといえます。

 

「人間の尊厳と自立」、「介護における尊厳の保持・自立支援」の
2項目について学習しますが、いずれも「尊厳」と「自立」がキーワードとなっています。

 

人間の尊厳と自立

 

「尊厳」と「自立」の意味を理解すること、
生存権などの人間の尊厳を保持するための制度の変遷、
障害者などの自立に向けた運動や制度の変遷について、
また、「尊厳の保持」を明記した法律の種類について勉強します。

 

<介護における尊厳の保持・自立支援>

 

「アドボカシー」や「人権尊重」などをキーワードとして、
介護実践における利用者の尊厳保持と自立支援について勉強します。

試験対策

問出題され、短文事例形式の問題も出題されます。

 

ですが、学習内容量が少ない科目でもあるので、
毎回同じような内容が出題される可能性も高く
過去問題を繰り返しておくことで得点できる可能性も高くなります。

 

特に、「生存権」や「社会福祉サービス」などの尊厳の保持に向けた法制度の問題や、
障害者福祉の発展として「IL運動」や「エンパワメント」についての問題、
権利擁護に関する問題などは出題傾向が高いといえます。

 

さらに、介護における尊厳の保持として、
身体拘束や行動制限となる禁止事項などについても、しっかり学習しておきましょう。

 

また、この科目で学習する内容は、他の科目でも勉強する内容となっています。
ですから、練習問題や予想問題、過去問題集を繰り返し解いて理解を深めることにより、
学習時間の短縮化を図る事も可能です。

尊厳とは

「人間の尊厳」とは、人間が個人として尊重されることを意味します。
基本的人権と同義で使用されることもあります。
そして、国際連合憲章の前文で、人間の尊厳を基本の原理としています。

 

国際連合憲章<前文>

 

『われら連合国の人民は、我らの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を
人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、
基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念を改めて確認し、
正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、
一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること』

 

つまり、尊厳を守ることや支えることは、
人の自尊心を高めることであり、
人が高い自尊心を維持できるようにすることと捉えることができると思います。
そして、自分の目的を達成するために、人を操ること、
使用すること、傷つけることなどあってはならないことです。

 

世界人権宣言の第一条においても、
人間の尊厳を基本の原理としています。

 

世界人権宣言第一条

 

『すべての人間は、生まれながらにして自由であり、
かつ、尊厳と権利とについて平等である。
人間は、理性と良心とを授けられており、
互いに同胞の精神を持って行動しなければならない』

 

さらに、日本では、日本国憲法の三大原理を基礎の原理として、
人間の尊厳を置いています。

 

日本国憲法の三大原理

 

@ 国民主権
A 基本的人権の尊重
B 平和主義

 

そして、日本国憲法第13条においても、
個人の尊重や幸福追求権、公共の福祉について規定し、
日本国憲法第24条では、家庭生活での個人の尊厳が規定され、
日本国憲法第25条では、生存権について規定されています。

 

日本国憲法第13条

 

『全て国民は、個人として尊重される。
生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、
公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、
最大の尊重を必要とする』

 

日本国憲法第24条

 

『配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、
離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、
法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、
制定されなければならない』

 

日本国憲法第25条

 

『全ての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する』

アドボカシーとは

「アドボカシー」とは「代弁」や「権利擁護」のことです。
社会福祉分野では、高齢者や障害者などの利用者が、
自身が抱える課題屋やニーズに気づいていない場合、
或いは自分で訴えることができない場合に、
援助者が利用者の課題やニーズを代弁し、
福祉サービスの適切な利用に結びつけることにより、
当該利用者の権利を擁護することを意味しています。

 

高齢者や障害者の権利を擁護する制度や事業としては、
「成年後見制度」や「日常生活自立支援事業」などがあります。
また、「高齢者虐待防止法」、「児童虐待防止法」など、
高齢者や児童の権利を擁護する法律があり、
障害者虐待防止の法律「障害者着体の防止」、
「障害者の擁護者に対する支援等に関する法律」も制定されています。

 

・高齢者虐待防止法

 

「高齢者虐待防止法」は、高齢者の権利利益を養護することを目的とした高齢者虐待の防止、
高齢者の擁護者に対する支援等に関する法律です。

 

高齢者虐待防止法では、高齢者虐待を5種類に定義しています。

 

高齢者虐待防止法の高齢者虐待の5種類とは、
「身体的虐待」、「ネグレクト」、「心理的虐待」、「性的虐待」、「経済的虐待」です。

 

・児童虐待防止法

 

「児童虐待防止法」は、児童の権利利益の擁護に資することを目的とする法律です。

 

・障害者虐待防止法

 

「障害者虐待防止法」は、「障害者虐待の防止」、
「障害者の養護に対する支援等に関する法律」が制定され、
障害者虐待は、擁護者による障害者虐待、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待、
使用者による障害者虐待に大別し、
それぞれ「身体的虐待」、「ネグレクト」、「心理的虐待」、
「性的虐待」、「経済的虐待」の5種類の虐待を定義しています。

 

また、このほかにも、「何人も、障害者に対して、虐待をしてはならない」という
障害者に対する虐待の禁止事項を設けています。

身体拘束や行動制限

身体拘束や行動を制限する行為に関して、
「介護保険指導基準において禁止の対象となる具体的な行為」として、
以下の11項目があります。

 

<介護保険指導基準において禁止の対象となる具体的な行為>

 

@ 徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。

 

A 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。

 

B 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。

 

C 点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。

 

D 点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、
または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。

 

E 車いすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、
Y字型抑制帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。

 

F 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。

 

G 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。

 

H 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。

 

I 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。

 

J 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。

「尊厳の保持」が明記されている福祉関係法制度の条文

尊厳の保持が明記されている代表的な福祉関係法制度の条文には、
以下のようなものがあります。

 

社会福祉法(福祉サービスの基本的理念)

 

福祉サービスは、個人の尊厳の保持を旨とし、
その内容は、福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され、
又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして、
良質かつ適切なものでなければならない。

 

介護保険法(目的)

 

この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護の状態となり、
入浴、排泄、食時等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理
その他の医療を要する者等について、
これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、
必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、
国民の共同連携の理念に基づき介護保険制度を設け、
その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、
もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

 

高齢者虐待防止法(目的)

 

この法律は、高齢者に対する虐待が深刻な状況にあり、
高齢者の尊厳の保持にとって高齢者に対する虐待を防止することが極めて重要であること等にかんがみ、
高齢者虐待の防止等に関する国等の責務、
高齢者虐待を受けた高齢者に対する保護のための措置、
養護者の負担の軽減を図ること等の養護者に対する養護者による
高齢者虐待の防止に資する支援のための措置等を定めることにより、
高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、
もって高齢者の権利利益の擁護に資することを目的とする。

 

障害者基本法(地域社会における共生等)

 

全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、
相互に人格と個性を尊重しあいながら共生する社会の実現は、
全ての障害者が障害者でない者と等しく、
基本的人権を享有する個人としてのその尊厳が重んぜられ、
その尊厳にふさわしい生活を保護される権利を有することを前提とする。

 

社会福祉士及び介護福祉士法(誠実義務)

社会福祉士及び介護福祉士は、その担当する者が個人の尊厳を保持し、
自立した日常生活を営むことができるよう、
常にその者の立場に立って、誠実にその業務を行わなければならない。

問題例

人権についての基礎問題で、問題集にこのような問題がありました。

 

Q. 人権についての主要な宣言や規約などに関する記述のうち、適切なものを一つ選びなさい。

 

@ 世界人権宣言は、1950年の第5回国連総会において採択された。

 

A 国際事件規約は、世界人権宣言の内容を基礎として条約化したものであり、わが国は1979年に署名した。

 

B 「高齢者のための国連原則」とは、高齢者の自立、自己実現、尊厳の3項目の実現を目指したものである。

 

C わが国は、1969年に人種差別徹底条約に加入した。

 

D わが国が1985年に締結した女子差別撤廃条約は、1979年の第34回国連総会において採択され、1981年に発効した。

 

 

この問題の正解は「D」です。

 

@の1950年の第5回国連総会では、毎年12月10日を「人権デー」とすることが決議されています。
世界人権宣言は、「全ての人民と全ての国とが達成すべき共通の基準」を宣言したもので、
1948年の第3回国連総会において採択されました。
よって、@は、不正解です。

 

Aの国際人権規約は、1966年の第21回国連総会で採択され、1976年に発効したものです。
そして、わが国は1979年に批准しています。
よって、Aは、不正解です。

 

Bの「高齢者のための国連原則」は、
高齢者の自立、参加、ケア、自己実現、尊厳を実現することを目指したものです。
つまり、3項目の実現ではなく5項目の実現を目指したものですね。
また、1991年の第46回国連総会において採択されています。
よって、Bは、不正解です。

 

Cの人種差別撤廃条約は、1965年の第20回国連総会において採択され、1969年に発効しています。
そして、わが国が加入したのは1995年です。
よって、Cは、不正解です。

 

正解はDです。

 

Dでのべられている「女子差別撤廃条約」では、女子に対する差別を、
「性に基づく区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他いかなる分野においても、
女子が、男女の平等を基礎として人権及び基本的自由を認識し、
享有し又は行使することを害し又は無効にする効果又は目的を有するもの」と定義しています。
そして、女子とは、婚姻をしているかいないかを問いません。